2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『流れよわが涙、と警官は言った』感想:現実喪失とアイデンティティの揺らぎ

はじめに フィリップ・K・ディックの『流れよわが涙、と警官は言った』(1974年)を読み終えました。 本作は ジョン・W・キャンベル記念賞を受賞し、ヒューゴ賞やネビュラ賞の候補にもなった経歴を持つ作品で、批評家からは「1970年代ディックの代表作」とし…

『ヴァリス』感想: 神学とSFが交錯する難解な迷宮

はじめに フィリップ・K・ディックの小説『ヴァリス』(1981年)を読み終えました。 本作はディック後期の代表作のひとつであり、批評家からは「思想的で挑戦的な作品」として高く評価されています。実際に読んでみても、神学・哲学を前面に押し出した内容で…

『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』感想:緻密な脚本が光る現代版クラシック・ミステリー

はじめに ライアン・ジョンソン監督によるミステリー映画『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』を配信で視聴しました。本作は、古畑任三郎や刑事コロンボに代表される“倒叙形式”を現代的に蘇らせた作品です。 公開当時から批評家や観客の評価が非常に高…